老いては?

母の隣のベッドに94才のトキさんがいる
痴呆は無いようだが、ベッドから起きて歩けない様子
なにかの用事があるときはナースコールをする
必ず、にこやかな顔で、”お手を煩わせてすみませんね〜、有難う”という

入院は長かったようで、やっと退院の日取りも決まったようだ
以前にこの部屋にいて、リハビリで上階に移ったマツさんが
散歩がてらトキさんのところによった

「帰れるようになってよかったね〜」
「でも、すぐ家に帰れないんだよ」
「どうして?」
「息子がそのまま帰ってきても歩けないから、俺は世話できない
少し、リハビリして、歩けるようになってから帰ってきてくれと言うんだよ」
「そうだね、迷惑かけるもんね
 老いては子に従えって言うから、今回はそうしたら?」
「そうだね、そろそろ、そうしようかね」
「私も、もうすぐ90才だから、そろそろ頑張らずに従おうかと思うんだよ」



はー、すごいな〜



人は思いに負けるときがある
可愛そう、大変だ、そんな言葉や想いが体をそのような状態にさせるときがある
一見冷たいような言葉や態度が、なにくそっと奮起させたり、
あれっ、なんでもないんだと思わせたりすることもある



自分が引き受け無ければならないことはどんなに避けようとしても来てしまう
それは他の人が代わってやって上げられる宿題ではないのだから
それを素直に受け入れ、愚痴を言わずやってきた人に最後にマル印がつくのだろうな