赤ちゃんとじい様の死

生後一年にも満たない赤ちゃんの死と70歳台の元気いっぱい働き者爺さんの死、片方は歴史を新たに刻むだろう、一方は歴史を刻んだ。
歴史を刻む人は、赤ちゃんのお兄さん。生まれてすぐ家に帰ることなく入院生活だった弟をお兄ちゃんはお見舞いし続けた。
火葬後の收骨のときも何か独り言で走り回ったお兄ちゃん。
数センチの遺骨は箸で拾うのもつらすぎるが、入院中の母親に代わり父は凝視して箸をおどらせる。
将来、お兄ちゃんはパパに聞くかもしれない、「この赤ちゃん誰なの」と写真を見て。パパは言うだろう、「僕の弟だよ。遠いところに行ってしまったけど、いつも僕を見てると思うよ。なんと言ってるかって、そりゃお兄ちゃん頑張って、といってるよ」。
一方、歴史を刻んだ人。
近所でも評判のお爺さんは事故でおおけがをしたけど、それでも元気に働いていた。しかし、疲れの蓄積は想像以上で、消耗度は大きかったのか事故後亡くなるのは早かった。
赤ちゃんとじい様、生きた場所も時間の長さも違う、でも歴史は確かに刻んでいる。
姿は多くの人の目に焼きつき、声や肌は多くの人に染み込んでいるから。