半農半火葬人

絶筆宣言

カテゴリー「半農半火葬人」は当分の間、休止します。 葬儀の形が慣習としてどのように残されてきたのか、それよりももっと「いのち」について考えてみたかったことが、カテゴリーに加えた理由でした。 しかし、それを表現する手法としては、こんな提出の仕…

満足したおばあさんとありがとうお父さん

お棺にあり、安らかな表情をみせる80歳台のおばあさんに、たくさんの孫が優しい手を伸ばしていた。 收骨室で、おばあさんの息子は孫達にたくさんの声をかけていた。優しいおばあさんだったことを他人の火葬人、私にも感じさせる光景が広がる。 ーおばあちゃ…

大正生まれと平成17年生まれ

19日、皆さんのコメントをいただき免疫力抜群だったのに少し沈んだ話になりますが、ごめんなさい。 ー 大正生まれの方の最後のお別れにかけられる言葉には、 ーありがとう、いろいろとお世話になりました ー三途の川でまっててね、後から行くから ー楽しかっ…

赤ちゃんとじい様の死

生後一年にも満たない赤ちゃんの死と70歳台の元気いっぱい働き者爺さんの死、片方は歴史を新たに刻むだろう、一方は歴史を刻んだ。 歴史を刻む人は、赤ちゃんのお兄さん。生まれてすぐ家に帰ることなく入院生活だった弟をお兄ちゃんはお見舞いし続けた。 …

田舎の葬儀は「部落」が総出のイベント

正月から連日の火葬、この寒さではどこの火葬場もそうらしい。 きょうは葬儀場の遺族の様子はやめて、慣習というか因習なのか「しきたり」が大手を振るうのお話。 「しきたり」の大風呂敷に包まれて田舎の葬儀は進行する。 「部落」内から葬儀を出すときは、…

ゆえあって百姓しながらの火葬場仕事です

大雪と低温、地球ー自然は冷徹な心を持って人間に覆い被さってきた。 春と秋は短期間の形だけでごまかし、猛々しい夏と吹きすさぶ冬を演出したのが昨年から年頭にかけての気候だろう。 何故こんなにまでも人間に対して過酷に迫るのか。 戦争と悲惨と難病が深…

中年の死は無念いっぱい

年末年始の火葬が今年は多い。中年男性の火葬が続いた。 高齢者の火葬もあったが、これからも続くだろう人生を絶った男性の火葬は、表現できない複雑さを抱く。 「自死」の男性は、九州を離れた遠いところから以前訪れた阿蘇の温泉地に最終地を決めていたの…

松の内の葬儀

一月七日まで、いわゆる松の内の葬儀は控える、と仏さんの世界では言われているが現実そうもいかない。 正月に遠くの子供や孫、家族みんなが集まり、アットホームの空気に浸っているその時、驚愕の事件が襲った。 「お父さんはまだ寝てるの。起こしてきて」…

1人で去るのは淋しい

身寄りが無い年配の男性を火葬をした。 集落の世話人など数名の立会いで收骨になったが、無言の收骨もにぎやかな收骨もどちらも遠慮したい思いがした。 死後数日経過して発見されたようだ。酒びたりの日々との話があり、この寒さとわびしさでは酒に頼りがち…

迷信は多い

若い遺体は火葬時間も長く、骨も多く残る。收骨時に箸で拾う時も重たいので子供が掴むのは無理がある。しかも箸で叩いてもキィーンと響く。 この若い人の火葬は数日前の友引の日にあった。葬式は翌日にすると遺族の方が言っていたが、何故、友引の日に葬式を…

仏さんとエンジェル

收骨する時に骨壷に最後に入るお骨は「のど仏」ですが、こののど仏は誰にでもある。 僕は長い間思ってた、男にしかないのど仏と。男性ののどから飛び出しているのは軟骨であり、これは燃えてしまうから骨としては残らない。つまり收骨できないのど仏である。…

激論する評論家たち

火葬が終わり收骨室で白骨と対面した遺族は、評論家に突如変身する。 拾った言葉の数々。「骨がぼろぼろになっとる、骨粗しょう症と違うか」「胸が悪かったんで胸の骨の色がかわっとるだろ。他と違うな」「頭蓋骨の色白かナッ、この人は頭良かったんじゃろ」…

雪中火葬、人間の生死は自然の営みのなかにある

火葬場全体を包み込む雪を排除しないと遺体も搬入できない。 雪かきをした。雪は止んでいたので助かったが、雪かきにはスコップではダメ。雪がへばりついてはなれないし、綿雪以外は重たくてすぐばてるから、プラスチックの雪かき専用のスコップを使う。軽量…

交通事故

お年よりの交通事故死の火葬をした。 道路横断中に乗用車にはねられて亡くなられた。運転していた人には条件が悪かったかもしれない。カーブの下り道、しかももやがかかっていた見通しが悪い時間帯。前方不注意になるだろうか。はねた人、はねられた人にとっ…

雪より低温

低温注意報 阿蘇は、最高気温がマイナス1℃、最低気温がマイナス10℃です。札幌がそれぞれ1℃、マイナス6℃だなんて信じられない。鹿児島が最高6℃最低マイナス2℃なんだから全国が冷蔵庫日本になってしまった。 こんな時は道路に注意。阿蘇も国道は除雪さ…

不思議な光景

多くの遺族は、火葬前と火葬後の表情が変る。 火葬前は、遺体に人として接する事ができる最後の瞬間である。高ぶる感情を全身で表す人や奥底に留める人様々な態様がお棺を取り巻く。心を置き忘れたかのような表情をしながら。 しかし、火葬が終わり白骨体で…

男性の自死

宿命なのか、波乱の人生最後は自殺だった。 心を奪われた人が突然の失踪、再婚後は勤務先での苦労。生活に困難さがつきまとっていたようだ。すべてを一身に背負ったであろう男性の選んだ人生とは、死であった。 1998年ごろから自殺者は急増して昨年は一年間…

孫の悲鳴

高齢のおばあさんを火葬した。 告別室から火葬ホールまで泣き続ける娘さんがいた。お孫さんだろう。火葬スイッチを押すなと言う。おばあちゃんを連れ戻しに行くと言う。 孫娘「私は、おばあちゃんに何もしてやっていない」母親「温泉にも連れて行ったじゃな…

孔雀

毒を無毒化する 多くの参列者が收骨室を埋めた。杉板でなく彫りが入った立派なお棺には、名士が眠っていたのだろうか。骨壷も色彩豊かにきらめき、中に収められる白骨を彩るかのようだ。 骨壷のふたには、その値打ちに関係なくどれも孔雀の絵が舞っている。 …

突然の事故

突然の水難事故に遭遇した50歳台の男性の遺体を焼いた。 ここは海が無いが、川や湖がある。 家族の生活のみならず心の大黒柱を失った悲しい火葬。数時間前には笑顔があっただろうお父さんが今はない子供達、夫がもう「ただいま」と言わない家に住む妻。 涙が…

白骨が崩れる

高齢者ほど骨がもろい。なかには固い人もいるがそれはまれ。白骨をきちんと收骨できればよいが、触ると砂山が崩れるようになるので慎重に。 普段は最高800℃だが、こんな遺体は600℃を超える火力で長時間噴かすと骨が少なくなるので注意が必要なのだ。 白骨に…

天寿

私、遺体を焼いています。 昨日今日と遺体は天寿を全うされたお二人と思いました。遺族も穏やかでした。二日間に及ぶ高齢の火葬には何故か私も落ち着いてスイッチONができました。これまで若者の死があっただけに。 高齢のこのお二人は夢の中、ご本尊に会わ…

超いそがし日々

今日は、公演最終日 ロングランはない。三日間の公演も今日で終わり。魔女か宇宙人かわけのわからぬ私の奥さんは、役まわりでも魔女のような芸風をこなした。二日目は皆乗っていたようだ。最終日、頑張ろう。 サアッ、、、そろそろお客さんが来る時間、交通…

脳梗塞

たくさんの参列者である。 脳梗塞で倒れた働き盛りの男性は、その後数時間で旅立ってしまった。 こんな小さな町にも厳しい仕事、苦悩に満ちた人生が満ち溢れているなんて。 「脱サラ万歳!里山の暮らしだ」と暢気に叫んだ私の近くで、この病名によるお悔やみ…

恋人の後を追う

若い女性の自死だった。 夫と小さな子がいるのにも関わらず、他の男性を好きになった女性は、自分の命を絶つことによってどんなメッセージを関係者に送りたかったのだろうか。 男性を選ぶ事が出来ず、家庭に落ち着いたかのように見えていても苦しい日々であ…

ネズミサイズの遺体

父親が両手に包み込むように、小さなケースを抱いて斎場にきた。妊娠数ヶ月ほどの遺体は、子ネズミほどの大きさでしかなかった。母親はまだ病院のベッドのなか、流産である。 火葬時間は20分ほど。遺骨はあるだろうか。ほとんど燃え尽きたり、吹き上げられ…