黄金の国 ジパング

コンバイン

  • ささくれし手よ収穫の終わりたる《歌人・逢坂美智子》

日本の秋、里山は稲穂に覆われ黄金に染まる。毎年の変わらない風景だけど心静かに感動が湧きあがる。
「米国追随の日本」「戦後最長の景気拡大」「地域間格差、企業間格差、貧富の格差などが増大」「市場原理最優先」などと声だかに叫ばれ、そんな新しい時代に突き進むほど多くの”暖かさ”が私達の手から零れ落ちているが、里山には変わらないものが生きている、人間らしいものが連綿と呼吸をしている。

  • 消毒、コンバイン、乾燥機

稲の苗、幼き時から消毒される。昔はそんなこと無かっただろう。更に、稲の生育中は雑草に負けないように除草剤を撒く(ベトナム戦争時のアメリカ軍による枯葉作戦に使用されたものではないだろうが)。以前は手作業の草取り、重労働だったと聞く。そして、稲刈り。刈った稲は稲架で天日にあてて干す。しかし、今はほとんどが熱風乾燥機で水分を飛ばす。
稲刈りもカマで刈っていけば腰を曲げ、作業はつらい。だから現代は、稲刈りから脱穀までオールマイティの機械「コンバイン」に頼る。
農薬は避けたいし、乾燥も太陽を浴びた方が良いのだがこの現実。

  • 米一粒に七人の神宿

先達者から聞いた話。
一粒の米は太陽の神、水の神、風の神、土の神、知恵の神、農具の神そして収穫の神、どの神が欠けても光り輝く米、一粒の米は完成しないと言う。
無農薬で育てる農家の人が「昨年良かったことが今年は低温でダメになったが、最後に天気が続き粒がりっぱになったのはよかった」と言うように、毎年が勉強であると七人の神は教えているのだろう。

  • 白米の話・脚気ー江戸わずらい

江戸時代の徳川家の将軍たちは白米ばかり食べて脚気(現代の膠原病なのか、足から始まる神経障害で死に至る)になったらしい。庶民や江戸に住まない人々は玄米を食べるので脚気にならないが、ビタミンB1含有量が少ない姫飯(白米・銀シャリ)を食べる上流階級もしくはその周辺の人達は脚気になりやすかったようだ。江戸にいれば発病するので別名「江戸患い」といった。
最近、精米所でこんな話を聞いた。「玄米が良かと言うばってん、米は白じゃなかと食えん」。これが農家の本音だろう。
昔から、苦悩の連続の農業には未来を抱く人は少なかっただろうが、大事に育てた白米の味は命だったのかもしれない。