おかえりなさい

九州のほぼ真ん中に位置する山都町(旧・清和村)に九州で唯一の人形浄瑠璃専用劇場「清和文楽館」があります






13〜16日までのお盆の間、”ふるさとへおかえりなさいフェスタ”が催され、小泉八雲原作の「雪おんな」を脚色した清和文楽オリジナルの人形浄瑠璃が上演されると聞いて、早速出かけてきました

和文楽は嘉永年間(1850年ごろ)この地を訪れた淡路の人情芝居の一座から、浄瑠璃好きな農民が人形を買い求め時術を習ったのが始まりです
一座は農家の人々で構成され、純粋な楽しみとして地域のお宮で奉納芝居を上演したり、各地の行事に招かれて披露して、伝承してきました
一時は太夫三味線も途絶え衰退しましたが、昭和54年、熊本県の無形重要文化財に指定されたのを機会に「文楽の里」として再生を期しました



平成4年には日本伝統技術である「騎馬戦組手工法」や「バット工法」で作られた専用劇場が建設され、平成6年に太夫・三味線も復活。現在は館内公演だけでなく、神社境内の野舞台、県内外、海外までの公演をこなしています

公演が始まる前に人形遣いの説明がありました
一体の人形を3人で遣います、頭と右手を操る「主遣い」左手を操る「左遣い」足を操る「足遣い」、
三人の気持ちが一つに成った瞬間、人形に魂がこもります
そして、浄瑠璃太夫の語りと三味線、影絵のような舞台設定・・・そこは怪しくも美しい情念の世界です


このオリジナル「雪おんな」の脚本を担当したのが夏目漱石の孫である半藤未利子さん
そして「雪おんな」の原作者の小泉八雲漱石は熊本第五高等学校(現熊本大学)で同じ英語教師として教鞭をとっています
その後、八雲は東京大学英文科の講師を務め、英国留学から戻った漱石が後を引き継ぎました
八雲と漱石は不思議な縁で結ばれているようです

                        
文楽の終演後はふれあいタイムがあり、登場した人形に触れたり、写真撮影もできますよ
和文楽をこんにちまで伝承してきたのは農家の皆さん方です
忙しい農作業の合間に、人形の手入れをし、練習に励んでおられます
それは子供達にも受け継がれていて、近くの清和小学校の6年生は月に数回人形浄瑠璃の練習をしているそうです

人形浄瑠璃は幽玄の世界、たまには、現世を忘れるのもいいですね

あっ、今夜はあの世からの方が沢山おいでです  

おかえりなさい、どうぞ、ごゆるりとお過ごしくださいませ!