男性の自死

宿命なのか、波乱の人生最後は自殺だった。
心を奪われた人が突然の失踪、再婚後は勤務先での苦労。生活に困難さがつきまとっていたようだ。すべてを一身に背負ったであろう男性の選んだ人生とは、死であった。
1998年ごろから自殺者は急増して昨年は一年間で32,325人、阪神淡路大震災の犠牲は6,433人だから、このクラスの地震が昨年5回も起きた計算になる。そのうち30歳〜50歳男性は13,402人、四割を占めている。借金苦と生活苦が主要因といわれる。
99年7月「どんなに苦しくとも生きよ」と言いつづけた江藤淳が自殺して社会に衝撃を与えたが、その遺書には「心身の不自由は進み、病苦絶えがたし、私は形骸に過ぎず」と書いてあったという。知性あふれる人の言辞は社会をリードするが、江藤の行動はある意味で裏切りになった。
遺体の直視は、遺族にとって残酷であったろう。