今日も温泉、共同湯

こんにちわ、とドアを開け風呂場へ入る。湯気であまり見えないが、浴槽につかり歯を磨いている人がいた。隣の人はひげをそりながら、かみそりを時々桶に突っ込みバチャバチャさせている。
そうなんです、ここは集落の共同湯、奴留湯温泉。10人ぐらいでいっぱいになりそうな広さ、湯温が35〜38度ぐらいかな、浴槽が二つある。一つの浴槽には「上がり湯」と書いてあるから身体を洗った後、上がる前に入る浴槽の意味を示している。
この温泉のいわれは、江戸時代参勤交代でお殿さんがぬるい湯にゆっくり浸からせて、奴さん達の疲れをとったところから「奴留湯温泉」というようになったと記してあった。
女風呂から声が聞こえる。天井が開いているから。耳をそばだてるとおばあちゃんがこんな事を言っていた。「家にも風呂はあるけど、ここがよかです。若いもんはシャワ−とか何とか言ってここにはこん。昔は父さんが一番に風呂に入るから薪で沸かして、ぬるかというから又沸かして、子のため沸かして、私が入る時は疲れ果てていましたばい。私も野菜を作っていますよ。今年は寒かでコマツナがウマか。こんなの店に出して人には食べさせられんとですよ。ハッハッハ」
僕の隣のおじさんも喋ってくれた。「昔の温泉は良かったよ、黒川温泉もそう。旅館が増えて一つの旅館にもたくさんの風呂を個室といって作るから湯が足りず、今は薄めとる。すぐ湯冷めしますよ。湯をもらってる旅館もあるしね」
温泉は冬に入るべきですね、冷え切った身体を満たしてくれる冬にその価値を確かめてみよう。このおじさんが別れ際に言ったことは、私は南阿蘇の○○温泉と一の宮の●●温泉が好きです。一度行ったらいいですよ。