春が来ると魔女キリコが思いだすのは”つわんこ”


子どもの頃春めいてくるとよく山に”つわんこ”をとりに行った。

  • ツワブキ(石蕗)】の子どもだから”つわんこ”

つやつやした葉の下からすくっと伸びて出る。折らないように引っ張って抜き取る。丁度、大きな耳掻きのような形。葉はまだ半開きで全体が茶色の産毛に包まれている。少し大きくなって葉が開いてきても産毛があるようだったら、まだ食することができる。
香りは蕗のトウの出るフキより強い。塩炒め、煮物、キャラブキ、つわんこごはん、などなど
にゃんとも食が進むのである。
(写真の中央で綿毛に覆われているものを採取する)

  • 楽しくて一抱えも採ってきた日にゃ後が大変。

早めにゆがいて、皮をむき一晩水にさらすのだけど、指先がアクでまっ茶色になりなかなか取れない。いつも、たくさん採るのはやめようと思うのだけど、マタタビかぎつけた猫みたいに春先になると飽きずに海岸ぞいの崖をめざす。
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そうそう、小学生の時、朝、つわんこやわらびを売りに来る人がいて、自分にもできそうだと思いやってみたいと母に言った。大変だからやめときと言われたがやりたいやりたい。
山に行ってどっさり採ってきて、夜遅くまで母と一緒に皮をむいて。一束10えんぐらいだったと思う。朝、5時頃おきて、一人で街中に売りに行った。でも、あまり売れなかった。商売をするって大変なんだと心から身にしみた記憶がある。
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”つわんこ”は暖かい海に面した土地でしか取れないのでこの阿蘇では見ることは無い。
だから、この時期”つわんこ”採りに故郷をめざす。

  • 同類の【フキ(蕗)】はあまり好きではない

阿蘇は山間部だから”つわんこ”より大きめで空洞があるフキが多い。
食べ比べると幼いツワブキのほうが柔らかく、甘味があって美味い。
失敗談がある。
阿蘇に移住して来た頃「ワッ!フキがある」と他人の畑の土手で”泥棒”して叱られた。「仕方なかばい?あげる」と言われて食べたが不味かった。”盗んだ”言い訳をすると自生だったので。
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フキには栽培されている品種、早生ブキや水フキもあり、東日本が多いようだ。雨傘にもなる大きな秋田フキは有名だが見たことがない。
《参考》
ツワブキもフキもキク科の多年草、秋に菊に似た花が咲く。
ツワブキは、葉が艶々しているから”艶蕗(つやふき)”それがなまって”石蕗”とか。
西日本の海岸に自生しているが、園芸用で庭先に植えている人もいる。
葉や茎が綿毛に覆われているほど柔らかい。大きくなると産毛がなくなり固くなる。