阿蘇一の宮神社の火振り神事


今日19時、松明をまわして五穀豊穣を願ってきた。

  • 真っ赤な炎に包まれて神社周辺を火の粉が舞う。

この神事には誰でも参加できる。
松明をもらい火をつけて振り回すが、勢いよく回すと縄が燃えて飛んでいく。
仁王立ちで回す一見外国人風の松明が私の足下に飛んできた。「危ない!振りすぎ」。
「私、ハンマー選手」
「これはハンマーじゃない。わらです」
「すいません」
そんなこんなの会話が、煙と火の粉と炎の風景に交差して、お祭り気分を高めていく。

「火振り神事」は、阿蘇神社十二神の「三の宮・国龍神(くにたつのかみ)」の結婚式です。「御前迎(ごぜむか)え」ともいいます。三の宮は農耕の神様で、妻を迎えられると農作物がよく育つといわれているんです。
三月は月に3回申(さる)の日がありますが、このお祭りは、2回目の申の日に行われます。朝、神職(しんしょく)と青年団の若者2人が、一の宮町から約12キロ離れた阿蘇市赤水字宮山(みややま)の吉松宮へ姫神(ひめがみ)様を迎えに行きます。
姫神さまのご神体をお御輿に入れ、若者2人が担いで阿蘇神社に向かいます。
夕闇が迫る頃、阿蘇神社の参道では、茅(かや)を束ねた松明(たいまつ)がたくさん用意されています。姫神さまのお神輿が阿蘇神社の参道に入ると、爆竹が上がって、待ち構えていた氏子や一般客が一斉に松明に火をつけて振り、姫君さまのお御輿をお迎えします。松明を振るのは、姫神様の足元を明るく照らして阿蘇神社にご案内するためです。

  • 東北地方の風土を表現する音楽グループ

「火振り神事」で思い出すのは”姫神

”Zipangu”のテーマ曲であり、作曲者は星吉昭、演奏は”姫神”。
この曲を初めて聴いたのは、和歌山の世界遺産空海高野山近くの深山だったと思う。
壮大な曲に全身が鼓動を打ち、見上げる木々や大地に魂が溶け込んでいくようだった。
私の場合、歌う音楽は歌詞のフレーズ一つ一つにシンパシーを抱き、自分が主人公になってしまうが、クラシックー特に好きなスメタナの”我が祖国”ーなどは、楽器の音色に酔わされてしまう。
しかし、「火振り神事」の曲には、いずれにもないスピリチュアルな気分になる。多分、私たちは大自然から生まれ、そして帰っていくのだろう。
多くの人に”姫神”ワールドを体験して欲しいと思う。ただ残念なことには、作曲家・シンセサイザー奏者の星吉昭が2年前の10月1日、58歳で亡くなったことである。
ご冥福をお祈りします。